紀州漆器

紀州漆器は、和歌山県海南市の黒江地区を中心に生産され、「黒江塗」とも呼ばれます。室町時代に近江系の木地師が紀州材を用いて渋地椀を作ったのが起源とされ、江戸時代には紀州徳川藩の保護のもと発展しました。
最大の特徴は、実用性の高さと「根来塗（ねごろぬり）」に代表される技法です。根来塗は、黒漆の上に朱漆を重ねて塗り、使い込むことで上の朱漆が磨耗し、下地の黒が文様として現れる独特の風合いを持ちます。
また、蒔絵や沈金といった加飾技法も取り入れ、天道塗、錦光塗、シルク塗といった独自の変り塗も考案されました。職人の分業制が確立され、庶民の日用品から始まり、現在は日本三大漆器の一つとして知られています。