前 大峰(まえ たいほう、1914-1977)は、昭和時代に活躍した漆芸家です。特に、石川県輪島(わじま)の伝統的な漆器技法である沈金(ちんきん)の分野で、近代的な表現を確立しました。
修行と作風: 輪島で沈金を学び、伝統的な線彫り技法だけでなく、多様な沈金の技法を駆使して、写実的でありながら詩情あふれる独自の作風を確立しました。従来の沈金が持つ硬質な印象に対し、前大峰の作品は優しく、温かみのある色彩と表現が特徴とされています。
革新性: 漆器の分野で工芸を芸術の域に高めることを志向し、日本画や洋画の要素を取り入れた斬新なデザインを発表しました。その技法と芸術性は、戦後の輪島沈金界に大きな影響を与えました。
栄誉: 1955年(昭和30年)に沈金の分野で重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されました。これは、沈金では初の認定であり、彼の技術と功績の大きさを物語っています。
代表作: 「沈金蒔絵箱 鶴」「沈金蒟醬飾箱 山帰来」などがあります。
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